20秒でわかる顎関節症
セルフ診断

顎以外の不調

顎関節症でみられる
頭や首まわりの症状について

顎関節症でみられることがある頭や首まわりの症状について

顎関節症というと、「顎が痛い」「口が開かない」「顎が鳴る」といった、顎そのものの症状を思い浮かべる方が多いと思います。

実際、顎関節症は、顎関節や筋肉の疼痛、顎関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする包括的診断名です。

一方で、顎関節症の患者様の中には、頭痛、首こり、肩こり、耳の奥の痛み、耳閉感、こめかみの張り、顔のだるさなど、頭頸部まわりの不調をあわせて訴える方が少なくありません。近年の研究や総説でも、顎関節症と頭痛、頸部痛、耳症状が併存しやすいことが報告されています。

ただし、ここはとても大切です。顎関節症で説明できることがあるからといって、顎関節症がすべての不調の原因とは限りません。

頭痛には頭痛の、耳の症状には耳の、首肩の症状には整形外科的・神経学的な原因があることがあります。日本顎関節学会の治療の指針でも、顎関節症と似た症状を示す疾患として、う蝕や歯周病、顎関節や筋肉の関連疾患、頭痛や神経痛などの口腔顔面痛、精神疾患や心身症などが挙げられており、鑑別診断が重要とされています。

当院では、こうした「顎以外の不調」を、何でも顎関節症のせいにしてしまう立場はとりません。その一方で、耳や頭、首肩の症状があるのに、顎との関連をまったく見ないのも不十分だと考えています。
大切なのは、顎の問題として考えるべき範囲と、ほかの疾患をまず疑うべき範囲を丁寧に分けることです。

顎関節症でみられることがある「顎以外の不調」

顎関節症に関連してみられることがある症状として、当院でよくご相談を受けるのは、次のようなものです。

  • 頭痛
  • こめかみの痛み、張り
  • 首こり
  • 肩こり
  • 耳の奥の痛み
  • 耳が詰まった感じ(耳閉感)
  • 頬の張り、顔のだるさ
  • 朝起きたときの顔や顎のこわばり
  • 口を開けると耳の近くが痛い
  • 硬いものを噛むと頭や首までつらくなる

これらの症状は、顎関節や筋肉の不調と一緒に現れることがあり、患者様ご本人は「顎の問題とは思っていなかった」と話されることも少なくありません。

なぜ顎の不調が、
頭や首まわりの不調として
現れるのか

なぜ顎の不調が、頭や首まわりの不調として現れるのか

顎は単独で働いているわけではない

顎の運動は、歯や顎関節だけで行われているわけではありません。

実際には、咬筋、側頭筋、外側翼突筋などの筋肉に加えて、頭や首の位置、頸部周囲の筋緊張、姿勢の影響を受けながら機能しています。顎関節症と頸部痛や頭痛の関連が指摘されるのは、このように顎が頭頸部全体の機能の中で働いているからです。

たとえば、食いしばりや歯ぎしりがあると、筋肉は過緊張を起こしやすくなります。
その結果、こめかみの重さや痛み、頬の張り、朝の顎のだるさとして現れることがあります。また、顎の動きに無理がある状態が続くと、首や肩まわりの筋緊張も高まりやすくなります。逆に、首や肩の強い緊張や姿勢の崩れが、顎の動きに影響することもあります。

つまり、顎関節症と頭頸部の不調は、どちらか一方が完全な原因で、もう一方が完全な結果という単純な関係ではなく、相互に影響し合う関係として理解するのが自然です。

頭痛

こめかみの重さや締めつけ感として現れることがあります

顎関節症でよくみられる顎以外の不調のひとつが頭痛です。

特に、こめかみが重い、締めつけられる感じがする、噛むと頭までつらいといった症状は、顎関節や筋肉の不調と関連していることがあります。頭痛は顎関節症に伴うことが多い関連症状のひとつとして報告されています。

ただし、頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、神経疾患など他の原因もあります。
視界の異常、吐き気を伴う強い頭痛、突然の激しい頭痛、しびれや麻痺を伴う頭痛などは、顎関節症だけで説明せず、一般内科や脳神経内科、脳神経外科などでの評価が必要です。

首こり・肩こり

マッサージだけでは戻りやすいことがあります

首こりや肩こりも、顎関節症の患者様でよく一緒にみられる症状です。

近年の研究では、顎関節症の患者群で頸部痛や頸部障害の併存が多いことが示されています。顎をかばう動きや、筋肉の緊張、頭位の変化が首肩まわりの筋緊張に影響しやすいためです。

「肩こりは昔からあるから」と見過ごされやすいですが、

  • 肩こりと同時に顎が疲れる
  • 首肩がつらい日に顎の違和感も強い
  • 長時間のデスクワークで顎も首もつらくなる

といった場合には、顎との関連を考える価値があります。

耳の奥の痛み・耳閉感

耳鼻科で異常がないのに続く場合は、顎もみる必要があります

耳の奥の痛みや耳閉感も、顎関節症の患者様でみられることがあります。

耳と顎関節は解剖学的に近く、筋肉や顎関節部の不調が耳の症状として感じられることがあります。TMDと耳症状の関連は繰り返し報告されています。

ただし、耳の症状ではまず耳鼻科的な病気を除外することが重要です。中耳炎、外耳炎、耳管機能の異常などがないのに症状が続く場合に、顎との関連を考えます。学会の指針が重視しているのも、こうした鑑別診断です。

顔のだるさ・頬の張り

筋肉の疲労として現れることがあります

  • 頬が張る
  • 顔が重い
  • こめかみから頬にかけて疲れる

こうした訴えは、咬筋や側頭筋の過緊張と関連していることがあります。顎関節症の病態分類のうち、筋肉痛障害では、まさにこうした症状が中心になりやすいです。

患者様によっては、痛みというより鈍いだるさや重たさとして感じることもあり、これを「顔の疲れ」と表現されることがあります。
特に、朝起きたときや、長時間の会話・仕事のあとに強くなる場合は、筋肉への負荷を考えやすくなります。

朝のこわばり

朝の顎や顔の重だるさは、夜間の負荷のサインであることがあります

朝起きたときに、

  • 顎が重い
  • 顔がこわばる
  • こめかみが張っている
  • 咬み合わせがしっくりしない

といった訴えがある場合、睡眠中の食いしばりや歯ぎしりなど、夜間の負荷が関与していることがあります。顎関節症の病因は多因子性であり、ブラキシズムが関与因子として重視されています。

もちろん、朝のこわばりだけで診断はできません。ただし、朝の症状に加えて、顎の痛み、顎関節音、開口障害、硬いものを噛みにくいといった症状がある場合には、顎関節や筋肉を含めて評価したほうがよいです。

どこまで顎と関係しやすく、
どこからは慎重にみるべきか

どこまでが顎と関係しやすく、どこからは慎重にみるべきか

顎関節症の患者様で、頭痛、首こり、肩こり、耳症状、顔のだるさなどが一緒にみられることは珍しくありません。

一方で、めまい、しびれ、視界異常、強い吐き気、動悸、全身倦怠感のような症状まで、すべて顎関節症で説明しようとするのは危険です。日本顎関節学会の指針でも、顎関節症に類似した症状を呈する疾患が多く存在することが明記されています。

したがって、当院では「顎以外の不調」についても、

  • 顎関節症と関連しやすい症状
  • 他の病気の除外を優先すべき症状

を分けて考えます。
ここを丁寧に分けることが、患者様にとっても安全ですし、医療としても誠実です。

当院での考え方

当院での考え方

顎だけでなく、頭頸部全体の不調として評価します

当院では、顎関節症を「顎だけの病気」とは考えていません。

もちろん診断の中心は顎関節・筋肉・関節円板・下顎運動ですが、実際の患者様の症状は、頭痛、首こり、肩こり、耳の違和感など、頭頸部全体に広がっていることがあります。

そのため診療では、次のような点を確認します。

  1. 顎関節部の圧痛
  2. 筋肉の圧痛や緊張
  3. 口量
  4. 開口路の偏位・蛇行
  5. 関節音の有無
  6. 食いしばり、歯ぎしり、TCHの有無
  7. 頭痛や肩こりとの時間的関係
  8. 朝の顎の重だるさの有無
  9. 咬み合わせの不安定さ
  10. 被せものや矯正治療との関連

必要に応じて、生活指導、セルフケア、運動療法、スプリント(マウスピース):スタビリゼーション口腔内装置などを含めた保存的な初期治療を検討します。

顎以外の不調でお悩みの方へ

顎以外の不調でお悩みの方へ

頭痛、首こり、肩こり、耳の奥の痛み、耳閉感、顔のだるさなどは、顎関節症に伴ってみられることがある症状です。

特に、顎の痛み、顎関節の音、口の開けにくさ、噛みにくさ、朝の顎の重だるさを伴う場合には、顎との関連を考える価値があります。

当院では、こうした顎以外の不調についても、顎関節・関節円板・筋肉・咬み合わせ・下顎運動を総合的に評価しています。
顎だけでなく、頭や首まわりの不調もあって気になるという方は、ご相談ください。