20秒でわかる顎関節症
セルフ診断

顎関節症の治療

顎関節症はどのように
治療するのか

顎関節症はどのように治療するのか
  • 「顎関節症と診断されたら、どのような治療をするのですか?」
  • 「マウスピースを入れれば治るのですか?」
  • 「咬み合わせを整えないと根本的には治らないのでしょうか?」
  • 「矯正治療や被せものの治療が必要になることはありますか?」

顎関節症について、このような疑問を持たれる方は少なくありません。
顎が痛い、口を開けると音がする、口が開きにくい、噛むとつらい――こうした症状があると、何をどこまで治療すべきなのか、不安になるのは自然なことです。

まず大切なことをお伝えすると、顎関節症の治療はすべての患者様で同じではありません。
現在の顎関節症治療では、まず保存的・可逆的な初期治療を行い、症状の軽減と機能の回復を目指します。

そのうえで、症状の背景に咬合の不安定さ、歯列不正、補綴不調和、下顎位の不安定さなどが深く関わっている場合には、より本質的な改善を目指す根本治療として、下記のような治療が必要になることがあります。

  • 矯正治療
  • 補綴治療
  • 矯正+補綴のコンビネーション治療

つまり、顎関節症の治療は、次の2つを分けて考えることが重要です。

  • 痛みを抑えるための初期治療と、
  • 咬合や機能の安定を図るための根本治療

ここを一緒くたにすると説明がぼやけますし、逆に分けて整理すると、患者様にも治療の意味が伝わりやすくなります。顎関節症は、勢いで片づけるより、構造的に整理したほうがうまくいくタイプです。

顎関節症の治療で
まず大切なこと

顎関節症の治療でまず大切なこと

正しい診断と病態の見極めが
治療の出発点

顎関節症は、単一の病気ではありません。現在は主に、下記のような病態に分けて考えます。

  1. 筋肉痛障害
  2. 顎関節痛障害
  3. 顎関節円板障害
  4. 変形性顎関節症

そのため、治療も「顎関節症だから全員同じ」ではなく、どの病態が主体かによって変わるのが基本です。たとえば、

  • 筋肉の緊張や食いしばりが主体なら、まず筋・習癖への対応が重要です。
  • 関節円板障害が主体なら、開口障害や関節運動異常への配慮が必要です。
  • 変形性変化があれば、関節への過負荷をどう減らすかが大切になります。

さらに、顎関節症の背景に歯列不正や補綴的な不調和が関与している場合には、初期治療だけでは安定しないことがあります。
したがって、治療の前提として重要なのは、次の2点を見極めることです。

  • 今ある症状を和らげるべき段階なのか
  • 咬合や歯列まで含めて再構築すべき段階なのか

顎関節症の初期治療

顎関節症の初期治療

まずは保存的・可逆的な治療から始める

顎関節症治療の最初の段階では、一般に保存的・可逆的な治療を行います。これは、体への負担が比較的少なく、必要に応じて調整や中止が可能な治療です。
目的は、まず痛みを軽減すること、口を開ける・噛む・話すといった機能を改善すること、そして悪化因子を減らすことです。
初期治療として重要なのは、主に次のようなものです。

  • 生活指導
  • 習癖の是正
  • 自己開口訓練・運動療法
  • スプリント(マウスピース):スタビリゼーション口腔内装置

この段階では、「いきなり歯を削る」「いきなり大きく咬み合わせを変える」といった不可逆的処置から始めるのではなく、まず顎関節と筋肉にかかる過剰な負担を減らすことが中心になります。

生活指導・習癖の是正

地味だが、とても大切な治療

顎関節症の治療で意外に大きな役割を持つのが、生活習慣の見直しです。派手さはありませんが、かなり重要です。具体的には、下記のようなことです。

  • 硬いもの、長時間噛むものを控える
  • 大きく開けすぎない
  • 頬杖を避ける
  • うつぶせ寝、横向き寝での片側圧迫を減らす
  • 片側ばかりで噛む癖を見直す
  • 日中の歯の接触に気づく
  • 食いしばりや力みを減らす

特にTCH(歯列接触癖)は見落とされやすい負荷因子です。強く噛みしめていなくても、上下の歯をずっと接触させているだけで、筋肉は休めません。
こうした小さな負担が長時間続くことが、顎関節症を長引かせる一因になります。地味ですが、こういう“静かな悪役”がいちばんしぶといです。

自己開口訓練・運動療法

口が開きにくい方に重要になることがある

顎関節症では、病態によっては自己開口訓練や運動療法が重要になります。特に、口が開きにくい、引っかかる、動きが悪いといった症状がある場合には、顎関節の可動域改善や機能回復を目的に行うことがあります。
ただし、ここで大切なのは、自己流で無理にやらないことです。炎症が強い時期や、病態に合っていないやり方では、かえって悪化することがあります。
「痛くても開ければ治る」という根性論は、顎関節にはあまり通じません。きちんと状態を見ながら、必要な強さと範囲で進めることが大切です。

スプリント(マウスピース):
スタビリゼーション口腔内装置

顎関節症の初期治療でよく用いられるのが、スプリント(マウスピース):スタビリゼーション口腔内装置です。
これは、咬合の接触状態を一時的に安定させ、筋肉や顎関節への過剰な負担を軽減することを目的とした装置です。特に、食いしばりや歯ぎしりの影響が強い方、筋肉の痛みが強い方、関節への負荷軽減が必要な方では、保存的治療の有力な選択肢になります。

スプリント(マウスピース):スタビリゼーション口腔内装置

初期治療の
中心となる
装置

ただし、ここも誤解しやすいところですが、スプリント(マウスピース):スタビリゼーション口腔内装置は、万能の“根本治療”ではありません。あくまで初期治療・症状緩和・負荷軽減の手段として非常に有用ですが、顎関節症の背景にある歯列不正や咬合不安定まで永久的に解決するものではありません。
つまり、症状を和らげるために有効なことが多いが、それだけで全てが解決するとは限らないという位置づけです。

ここを極端に「マウスピースさえあれば大丈夫」と言うのも、「マウスピースは意味がない」と言うのも、どちらも雑です。

初期治療だけで十分な場合もある

ここは患者様に安心していただきたい点でもあります。顎関節症のすべてのケースで、矯正や補綴まで進むわけではありません。
生活指導、習癖是正、自己開口訓練、スプリント(マウスピース):スタビリゼーション口腔内装置などの初期治療によって、下記のような改善がみられるケースは少なくありません。

  • 痛みが改善する
  • 開口量が改善する
  • 噛みやすくなる
  • 日常生活に支障がなくなる

この場合、保存的治療を中心に経過をみながら安定を図ることが現実的です。
ただし、症状は一時的に良くなっても、背景にある咬合の問題や歯列の問題が残っていると、再発や不安定さにつながることがあります。そこで次に重要になるのが、根本治療が必要かどうかの見極めです。

顎関節症の根本治療とは

顎関節症の根本治療とは

咬合と機能の安定を目指す治療

顎関節症の中には、初期治療で痛みが軽減しても、背景にある問題が残るケースがあります。たとえば、下記のような状況です。

  • 歯列不正によって下顎位が不安定
  • 咬合支持が不十分
  • 補綴物の不調和がある
  • 咬合再構成が必要
  • 一部の歯の負担が過大
  • 顎位と咬合の安定がとれていない

このようなケースでは、症状の一時的緩和だけではなく、咬合と機能の安定を目指す根本治療が必要になります。そしてその方法として重要なのが、下記の治療です。

矯正治療

歯並びや咬合関係に問題がある場合、顎関節症の背景に歯列不正や咬合不安定が関わっていることがあります。そのような場合、矯正治療によって歯列を整え、咬合の安定を図ることが、根本的な改善につながることがあります。
矯正治療の目的は、単に見た目を整えることだけではありません。顎関節症の文脈では、機能的に無理の少ない咬合関係をつくることが大切です。

もちろん、矯正治療だけですべての顎関節症が治るわけではありませんが、背景に歯列不正がある症例では、根本治療として大きな意味を持ちます。

矯正治療

歯列・咬合の
安定を図る
根本治療

補綴治療

歯の欠損、咬耗、不適合補綴物、咬合支持の不足などがある場合には、補綴治療が重要になります。補綴治療によって咬合を再構成し、顎関節や筋肉に無理の少ない状態へ導くことが、根本治療になることがあります。
ここでいう補綴治療は、単に「被せものを入れる」という意味ではなく、「機能的な咬合をどのように再構築するか」という視点が重要です。

顎関節症の患者様では、咬合の高さ、接触バランス、下顎位の安定が治療計画に大きく関わることがあります。

補綴治療

咬合再構成
による
根本治療

矯正+補綴のコンビネーション治療

実際には、顎関節症の背景が単純でないことも多くあります。歯列不正もあり、補綴的不調和もあり、咬合再構成も必要――というケースでは、矯正治療+補綴治療のコンビネーション治療が必要になることがあります。
これは、歯並びだけを整えて終わるのでもなく、被せものだけをやり直して終わるのでもなく、全体の咬合と機能を設計し直す治療です。

こうしたケースでは、初期治療でいったん症状を落ち着かせたうえで、どのような形で最終的な咬合安定を目指すかを慎重に計画することが大切です。
つまり、初期治療で症状を和らげ、根本治療で安定をつくるという二段構えで考えるのが自然です。

矯正+補綴のコンビネーション治療

複雑な症例で
重要になる

咬合調整について

咬合調整について

安易に削る治療ではない

ここはかなり重要なので、はっきり書いておいたほうがよいです。顎関節症の治療で、「咬み合わせが原因なら、すぐ削ればよいのでは?」と考えられることがあります。
しかし、これはかなり慎重であるべきです。歯を削る処置は不可逆的であり、診断や治療計画が不十分なまま行うべきではありません。とくに顎関節症は多因子性なので、症状があるからすぐ歯を削る、という単純な話ではありません。

したがって、当院では、まず保存的な初期治療で症状と病態を整理し、必要があればその先に矯正治療・補綴治療・矯正+補綴のコンビネーション治療として、計画的に根本治療を考えます。
ここを飛ばして勢いで咬合をいじるのは、歯にも顎にも親切ではありません。勢いは診療では美徳にならないことが多いです。

治療は再評価しながら進める

治療は再評価しながら進める

顎関節症の治療は、一度始めたら同じことを延々と続けるものではありません。大切なのは、治療の途中で下記のような変化を再評価することです。

  • 痛みがどう変わったか
  • 開口量がどう変わったか
  • 噛みやすさがどう変わったか
  • 関節音や違和感がどう変わったか
  • 咬合の安定が得られているか

初期治療で十分か、あるいは根本治療へ進むべきか、その判断には再評価が不可欠です。
治療で怖いのは、改善しないことそのものより、改善しない理由を見直さずに惰性で同じことを続けることです。顎は惰性の治療にもなかなか辛口です。

顎関節症の治療で大切にしていること

顎関節症の治療で本当に大切なのは、下記のとおりです。

  • 正しい診断
  • 病態分類
  • 保存的な初期治療
  • スプリント(マウスピース):スタビリゼーション口腔内装置の適切な活用
  • 生活習慣・習癖の見直し
  • 再評価
  • 必要に応じた根本治療への移行
顎関節症の治療で大切にしていること

そして、根本治療が必要な場合には、下記の治療を用いて、咬合と機能の安定を図ることが重要です。

  • 矯正治療
  • 補綴治療
  • 矯正+補綴のコンビネーション治療

つまり、顎関節症治療は、対症療法だけでもないし、最初から大がかりな咬合再構成だけでもない。その中間で、現在の状態を見極めながら、必要な段階に応じて治療を組み立てることが本質です。

顎関節症の治療を
ご希望の方へ

顎関節症の治療をご希望の方へ

顎関節症の治療は、まず保存的・可逆的な初期治療を基本とし、生活指導、自己開口訓練、スプリント(マウスピース):スタビリゼーション口腔内装置などを用いながら、痛みと機能の改善を目指します。
そのうえで、背景にある咬合や歯列の問題まで含めて安定を図る必要がある場合には、下記による根本治療を検討します。

  • 矯正治療
  • 補綴治療
  • 矯正+補綴のコンビネーション治療

当院では、顎関節だけを局所的にみるのではなく、顎関節・筋肉・下顎運動・咬合・歯列・補綴状態・生活習慣まで含めて評価し、現在の症状に対する初期治療と、その先の根本治療の両方を見据えて治療方針をご提案します。

顎が痛い、鳴る、開かない、噛みにくい、マウスピースだけでよいのか分からない、根本的に整えたいという方は、お早めにご相談ください。